「インセンティブ」の視点で考える【“Naked Economics”を読んでの考察】

Naked Economics: Undressing the Dismal ScienceNaked Economics: Undressing the Dismal Science” のChapter2に出てくる「インセンティブ」。要するに「行動の動機付けとなる要因」のこと(もっと詳しくはウィキペディアの解説をどうぞ)。これは経済を考えるときの、基本中の基本。そしてこれがわかると、経済のことがいろいろと見えてきます。ちょっと最近の世の中のことなどをこの「インセンティブ」の視点から、いろいろ眺めてみましょう。

例えば原油価格の高騰

最近、本当に気になる石油価格の高騰。ふだん、あんまりガソリンの値段を気にしない私ですが、さすがに170円/リットルを超えるようになってくると、「困ったものだな」と思います。しかし、インセンティブの視点から考えると、興味深いことが見えてきます。

環境や状況が変わると、インセンティブの影響も変わってきます。今回の石油価格高騰で、インセンティブが高まったビジネスはないのか。そう考えて探してみると、こういう記事が目に付き始めます。ガソリンの価格の高騰のため、消費者が燃費のよいハイブリッド車を買うインセンティブが高くなっているのですね。

つまり、人々の生活は苦しくなる反面、環境には優しい生活は後押しされるのです。こう考えると今回の石油価格高騰は、環境問題を考えるにはいい機会なのかもしれません。

世の中の変化とインセンティブ

世の中が変化するとき、インセンティブの働き方が変化します。インセンティブが低くなって、困る人も出てくる反面、必ずどこかでインセンティブが高まる部分も出てくるのです。インセンティブの視点から、この両方を常に見れるようにしておくと、変化の中にチャンスを見つけられるようになってくるのではないでしょうか。

ちなみに、1970年代のオイルショックの時に、低燃費の日本車は世界でのシェアを一気に伸ばしています。今のハイブリット車が伸びている状況とよく似ていますね。さらにさかのぼって産業革命のとき、イギリスで蒸気機関が受け入れられたのは、当時主流だった動力、「馬」のエサ代が高騰し、蒸気機関を使うインセンティブが増したからだ、と言われています。

もうひとつ、最近の原料の高騰が新しい技術の開発のインセンティブを高め、環境に影響を与えようとしている例。本日の日経新聞の一面に『素材各社、資源高で新技術 ガラス生産、燃料費半減』と載っていました。現在のガラス生産技術は100年以上も前に開発されたものだそうで、今回の新技術はそれを根本から変えるものなのだそうだ。そして燃料費は半減するという。

インセンティブの働きが変わると世界が変わる。そのいい例ですよね。

インセンティブの変化と世の中の変化

次は逆から考えてみましょう。今、世界は大きく変化しています。これは誰もがうなづくところでしょう。じゃあ、世界が変化している、ということは何かインセンティブに変化が起こっているのではないか。「世界が変わっている → インセンティブの働きが変わっている」こういうことが言えるんじゃないか。そう考えてみるんです。

確かにその可能性はありますよね。じゃあ、もしそうだとしたらいったい何のインセンティブに変化が起こっているのでしょうか。

「お金がたくさんあって、たくさんモノを買えれば幸せ になれる」
「いい給料をもらうために、いい会社に入る」
「いい会社に入るために、いい学校へ行く」

以前は、こういう考えが人々の間に強くありました。つまり「たくさんモノを買える」「いっぱいお金を稼ぐ」ということが行動のインセンティブとして強く働いていたのです。それが勉強や仕事をするインセンティブだったのです。ところが、それに変化が起こってきています。

「モノがあっても幸せになれるわけじゃない」
「お金があっても必ずしも幸福にはなれない」

そう人々が考え始めています。つまり「たくさんモノを買える」「いっぱいお金を稼ぐ」ということがインセンティブとしてあまり働かなくなってきたのです。だから、「学校で一生懸命勉強しても意味がない」と子どもたちが考えるようになり、学力低下が進んでいる。そして、「会社で働いていい給料もらったって、幸せにはなれない」と若者たちが考え、ニートが増えている。そう言えるのかもしれません。

「たくさんモノを買える」「いっぱいお金を稼ぐ」ということがインセンティブとしてあまり働かなくなってきている。だとすれば、それに代わる「生きることのインセンティブ」は何になるのだろうか?

答えはひとつじゃないかもしれない。だから、ここでは私が今考えている「答え」はあえて書かない。でも、それが見えてきている人が少しずつ増えてきているような気がする。そしてそれが社会の中で常識になっていくにつれて社会の仕組みや経済の仕組みは根本から変わっていくのだろう。

最終更新日: | 初回公開日: