「ストレスに強い自分」の作り方 【ストレスマネジメントの名著 “The Upside of Stress” を読んでの考察】

現代は歴史上最もストレスの多い時代なのかもしれません。そんな時代の中でストレスに対処し、より良く生きていくためにはどうしたら良いのでしょうか?この記事ではその時代をより良く生きるためのヒントを、ストレスマネジメントに関するベストセラー “The Upside of Stress”の中から見つけていきます。

wave-surf

【問題点】現代社会はストレスの荒波の中にある

私たちは歴史上もっともストレスの多い時代に生きているのかもしれません。仕事の変化は年々早くなり、より早くより多くの成果を出すことを求められるようになってきています。家庭でも家族の生活スタイルはめまぐるしく変化し、お互いのスケジュールを調整するだけでもけっこう大変です。テレビを見れば世界では毎日毎日数多くの暗いニュースが流れ、今後の世界がどうなっていくのかを考えると、イライラや不安が募ります。

このようなストレスを感じながら仕事をしていると、なかなか目の前の仕事に集中しきれなくなってきてしまったりします。また、多くの悩みごとの中で生活していると、食欲不振や暴飲暴食に陥ってしまったり、その他不健康な生活習慣が身について体を壊してしまったりもします。

このようなストレスによるマイナスの効果を防ぎ、イキイキと仕事をし成果を上げていくためにはいったいどうしたらいいのでしょうか?

【解決策】「ストレスに強い自分」を作ろう!

答えはシンプルです。「ストレスに強い自分」を作ってしまえばいいのです。インターネットやスマートフォンが普及し、今まで以上に情報の流れが早くなっていく社会の中で、ストレスのかかる状況自体を減らしていくのは難しいかもしれません。でも、自分自身をストレスに強い状態に変えていくことなら、比較的簡単なはずです。

そのためには「ストレスは実は体に良い」と知るだけで良い

upside-of-stress-coverソフィーの洋書テキストのひとつで、ストレスに関する最新研究をまとめ上げた良著 “The Upside of Stress” の中で、著者のケリー・マクゴニガルは「ストレスに強くなるためには『ストレスは実は体に良い』と知るだけで良い」と述べています。

近代の科学では「ストレスは体に悪い」と考えられてきました。そしてストレスは私たちの脳ミソの働きを鈍らせ私たちの体を病気にしてしまう、と思われてきました。しかし、「それは間違いである」と著者は主張しています最新の科学はストレス自体は決して人間にとってマイナスではなく、むしろプラスのものであり、体や脳に良いものであることを発見した、ということなのです。そしてそれを知ることだけで実際に体に変化が現れる、と言うのです。

事故後トラウマ障害が起こりやすい人と起こりにくい人の違いとは?

その主張を証明するために著者が本の中で取り上げている調査をひとつ紹介しましょう。1990年代後半オハイオ州にある病院で行われたものです。

大きな事故に遭ったばかりの人たちから尿サンプルを採り、そこからストレスホルモンの量を調べました。そして事故から1ヶ月後、55名の被験者のうち9名がPTSD(心的外傷後ストレス障害)である、と診断されました。事故直後のストレスホルモンを調べてみるとコルチゾールとアドレナリンというストレスホルモンの値が低い人ほど、PTSDになっていることがわかりました。逆にこのストレスホルモンの値が高い人ほど、PTSDにはなりにくいということがわかりました。(“The Upside of Stress”,p.37より抜粋して要約)
※事故時の映像が急に頭の中に蘇って恐怖に襲われパニックになったり、悪夢にうなされたりするような症状が出る

直感的には「事故後のストレスホルモンが多いほどPTSDになりやすいのでは?」と思ってしまいます。しかし実際にはまったく反対でした。

最近の研究ではコルチゾールなどのストレスホルモンはストレスを体に感じさせると同時に、ストレスからの回復力を高めるという治癒的効果があることもわかっています。医療の現場ではその治癒的効果を利用し、PTSDの治療目的で患者にコルチゾールを投与する、ということが行われているようです。それによりPTSDから回復した症例も医学誌などでは報告されているそうです。(“The Upside of Stress”, p.38参照)

失恋後、おもいっきり泣くとスッキリする理由

この最新の科学の発見からわかることは「ストレスは実は体に良い」ということです。私たちがストレスを感じること、すなわちストレスホルモンの分泌を感じることは、ストレスのかかる体験を「消化」し精神的な傷を回復させようとする力そのものを感じていることなのです。

オハイオの病院の被験者たちのうちPTSDになってしまった人たちは、ストレスのかかる状況から目を背け、その体験を「消化」しきれなかったために障害が起こるようになってしまったのかもしれません。

たとえば失恋した時に「失恋映画を見ておもいっきり泣いたらスッキリした」という経験がある人もいると思います。これはまさにストレスホルモンを分泌させて悲しい経験で負った傷を自然治癒させるような行為なのでしょう。

ストレスホルモンをガッツリ味わおう

今後、仕事や私生活の中でストレスがかかる状況に陥った時には「ストレスは実は体に良い」ということを思い出しましょう。そして今まさに分泌されているストレスホルモンをじっくりと味わってみるようにしましょう。それだけでストレスホルモンのひとつであるコルチゾールが十分に分泌されるようになり、回復力は高まります。

またストレスホルモンの中にはDHEAという脳の成長を促進する物質もあります。つまりストレスをきちんと感じれば脳の成長を促進できるのです。(“The Upside of Stress”, p.9参照)

さらにストレスホルモンの中には人の優しさや思いやりの能力を向上させるオキシトシンというものもあります。ですからストレスをしっかり感じれば感じるほど人は優しくなれるわけです。海援隊の武田鉄矢は『贈る言葉』の中で「人は悲しみが多いほど〜、人には優しくできるのだから〜」と歌いました。それは本当だったのです。

“The Upside of Stress” をぜひ読むべし

このようなちょっとしたストレスに関する最新科学の発見を知るだけでも「ストレスに強い自分」を作るための十分なきっかけになります。ぜひ日頃ストレスを感じる場面でここで紹介した研究結果などを思い出してみてください。さらに詳しくはぜひとも“The Upside of Stress”を読んでみてください。この本を読んでいくことでストレスに関する最新科学の研究成果に基づく正しい知識を得ることができます。そしてそれによってもっともっと「ストレスに強い自分」を作っていくことが出来るようになるでしょう。

追伸1

“The Upside of Stress”を読んで、英語力を上げながらストレスに強い自分をつくっていくための短期講座、やってます。詳細はこちら→『ストレスに強い自分を育てる方法を学ぶ「ストレスマネジメント学」with “The Upside of Stress”3ヶ月短期講座(通信コース)』

追伸2

ストレスに関する新しい科学の発見に関しての著者のTEDスピーチはこちら。大変よくまとまっています。ぜひコーヒーでも飲みながら見てみてください。(14分25秒)

最終更新日: | 初回公開日: