日本がどう英語教育に関する政策を進めるべきかをロシアの2人の少女が教えてくれた

「日本の英語教育は今後どうあるべきか?」という問いはよく議論になるテーマです。しかし、なかなか「これだ!」というひとつの答えは見つかりません。今回は偶然ある番組に出ていたある日本が大好きなロシアの2人の少女たちの日本語上達の様子から、この問いに対する答えを考察してみます。

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先の見えない英語教育のよくある議論

先日、日曜日の朝に珍しくテレビのチャンネルをひねると、フジテレビの『報道2001』という番組で目が留まりました。「今後の英語教育はどうあるべきか?」というようなテーマで議論が行われていたのです。その中では5〜6人の大人がそれぞれの考えを述べていました。

「英語はリスニングから入るべきだ」「いや、リーディングから始めた方が良いのだ」「英語圏に住めば英語なんて誰でもできるようになるのだ」「英語の教科書がおかしいのだ」「英語の飛び交う環境にどっぷりつからせればいいのだ」「語学は子供の頃からやらないとダメなのだ」などなど、様々な意見が飛び交っていました。でも、結局意見はまとまらず、まったくすっきりしないまま、司会者が「私たちは一体どうしたらいいのでしょうか?」というような感じで締めくくり、非常に残念な感じでそのコーナーは終わってしまいました。

このような英語教育に関しての議論は、テレビの討論会ではもちろん、様々な場所で同様な議論が行われています。しかし、その議論の内容は大抵どれもほぼ同じで、しかも何年たっても変わっていません。おそらく国の英語教育を決定していく人たちの議論もほぼ同じような感じで展開されているのではないでしょうか。まったく先が見えない感じです。

では私たちは一体どうしたらいいのでしょうか?

ロシアの女の子たち@『Youは何しに日本へ』

日曜日の朝のなんとも煮え切らない大人たちの議論が終わった後のCMをぼんやりと眺めながら、私は前の日に見た『Youは何しに日本へ』という番組の再放送の内容を思い出していました。成田空港で片っ端から外国人に「何しに日本へ来たの?」と声をかけ、面白そうな人に密着取材をしていくという人気番組です。

その時はこの中で、20歳くらいのロシア人の女の子2人が取り上げられていました。彼女たちは俳優の三浦春馬さんの大ファン。約1年前に日本に来た時に番組取材を受けていて、1年経った今、再び三浦春馬主演の映画を見るために日本に行くからまた会わないか、と番組スタッフにメールを送ってきていたのです。

ただ、1年前は日本語はまだまだ片言でした。ところが1年経って再び日本に来た彼女たちに会ってみると、日本語がほぼペラペラ。日本に住んでいたわけでもないのに、たった1年でこれだけ喋れるようになっている2人を見て、スタッフはかなり驚いていました。そしてテレビを見ていた私も同じように驚きました。きっと三浦春馬さんの映画やドラマを何度も何度も見まくったのでしょう。その日本語は教科書で覚えたような堅苦しいものでなく、日常の生活の中で覚えたように自然で聞き取りやすいものでした。

ロシアの女の子たちが教えてくれたもの

日曜朝の討論会で何人もの大人たちが出せなかった問いに対する答えを、彼女たちは持っていたんだな、とCMをぼんやりと眺めながら思いました。

彼女たちが短期間で日本語を習得できたのは、「三浦春馬」という俳優と、あくまでファンとして空想の中でのものではありますが、一種の人間関係を築けたからです。その上でおそらく何度も何度も同じ映画を見、自分のイメージの中で何度も何度も三浦春馬さんと会話をしたのでしょう。

hand-baby-relationship言葉の習得は人間関係によって強力に促進されます。赤ちゃんが最初に言葉を自らの意思で覚えようとするのもお母さんやお父さんなどとの人間関係があるからです。目の前の強力な興味の対象とコミュニケーションを取ろうとするから「ママ」「バイバイ」などの言葉を覚えていくわけです。保育園や幼稚園に入るとまわりのお友達との人間関係ができ、それによって言葉の習得は加速します。社会人になれば入った会社の上司やお客さんとの人間関係ができ、それぞれ独特の業界用語なども覚えていきます。私たちが今習得している日本語は、そもそも人間関係があったから手に入れることができたのです。人間関係が先、言語習得は後です。

ところが日本の英語教育は言語習得が先、人間関係は後、という発想で進んでいます。言語習得ができなければ、人間関係を結びようがない、と思い込んでいるのかもしれません。しかし実際は逆。覚えようとしている言葉の先に誰も存在していないのに、言葉はなかなか覚えられるものではありません。

リスニングから英語に馴染もうが、リーディングで学ぼうが、子供の頃に英語のヒアリングができる環境にどっぷり浸らせようが、どれも結局同じです。そこに豊かな人間関係があるのならそれは効果があるでしょうが、それがないのなら効果はほとんどないでしょう。

このあたりのことは他のブログ記事にも詳しく書いてあるので興味があれば読んでみてください。

私たちのスクールで行っていることについて

ちなみにソフィー・ジ・アカデミーで行っている洋書を読んで英語力を上げていく方法が効果的なのは、内容に興味を持って読み込んでいくうちに、その本の著者と一種の人間関係のようなものが出来上がっていくからだ、と私たちは考えています。1冊の洋書を3ヶ月もかけて繰り返し繰り返し読み込んでいくと、英語を読んでいる途中で著者から直接話しかけられているような錯覚に陥ることはよくあります。本によっては著者が本から飛び出してきて、胸ぐらでも掴みもうとするような勢いで本に書かれている内容を訴えかけているように感じることすらあります。

また最近は洋書のオーディオブックの利用も便利になりましたし、著者のスピーチ動画なども見やすくなったので、それらを上手に利用すればその仮想の人間関係はより深まっていきます。そして言語の習得はより促進されていきます。

関連ブログ

結論:「人間関係が先、言語が後」という原則に基づいて英語教育を構築すべし

効果のある英語の学び方はひとつではありません。ただ、この人間関係が先、言語が後、という原則さえずれなければ、かなりの確率で成功させることができるでしょう。そしてこの原則のもとに英語教育を行っていくべきである、というのがそのロシアの女の子たちが教えてくれていたことだと思うのです。

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