Environment for Success【成功環境学】

outliersこれまで、成功とは成功者としての心の在り方を身につけ、知識や能力など自分で努力するものによって得られるという考え方が一般的でした。成功環境学では、これまでの成功の定義とは全く違うことを学んでいきます。テキストは「成功には環境という要素が深く関係している」としている”Outliers”。著者は”The Tipping Point”, “Blink”とベストセラーを連発してきた売れっ子ノンフィクションライターMalcolm Gladwell氏。この講義では、

  • これまでにない新しい成功の定義
  • さまざまな環境が成功に与える影響
  • 自分を取り巻く環境の整え方
  • 成長を促進する環境の作り方

など、成功に対して効果的にアプローチする方法を学びます。 講師は、猪俣氏です。

特別講師プロフィール

inomatasan猪俣潤(いのまた じゅん) 1972年横浜生まれ。明治学院大学経済学部卒業。 大手進学予備校講師、高校教師を務めた後、渡米。 ウエスタンケンタッキー大学にて修士号取得。 専攻はリーダーシップ論。 現在は、米国現地法人自動車関連メーカーにて、 マネージメントアナリストとして活躍中。

2009/4/6(月)成功について語ろう!

僕は、アメリカの大学院でリーダーシップ論を学びました。そこでは、世界中のリーダーの研究をしてきました。だから成功本と言われているものにはほとんど目を通してきたと思います。でも、今回ここで扱う “Outliers” は、僕が読んできたどの本にもない斬新な切り口で、多くの事を学ぶことができそうです。

僕が、大学院で学んだことは、成功とは誰でもその可能性を持っていること。成功とは自分の手で掴むものなんですね。こういうと、首をひねる人がいるかもしれませんね。精一杯努力をしてきたのに、成功しなかったじゃかいかと。この本は、成功とはただ努力だけすれば手に入るものではないことに、気が付かせてくれます。

大切なことは、環境にも気を配ること。成功できる環境を見つけ出し、そこに飛び込むか、あるいは自分で環境を作り出す。本書では、環境が成功に及ぼす影響を余すところなく紹介してくれてます。僕らに、成功とは何か大きなヒントを与えてくれることでしょう。さあ、成功について語っていきましょう!

2009/4/7(火)さくらの便り

講義の内容とは関係ないのですが、 桜の季節なのでちょっと脱線して。。。僕は、桜に特別な思い入れがあります。高校教師をやっていた頃 卒業式で、生徒が森山直太朗さんの桜を歌ったから。僕は、教師を4年で辞めたので これが担任として 最初で最後の卒業式でした。

そして、今アメリカで僕が働いている 会社にある桜が満開です。 まさに、”今咲き誇る”ですね。僕は、今アメリカに来て 本当に、みなさんのおかげで とっても、充実した楽しい毎日を送らせていただいています。でも、まだまだやりたいこと、やらなければならないことが たくさんあります。

絶対に、成し遂げたい。大きな、桜の花を咲かせたい。そして、みなさんもきっと やりたいことが、たくさんあると思います。僕らみんなの桜の花が、満開に咲きますように。みんなが、満面の笑顔でいられますように。本当に、桜は美しい。やっと、春がきました。

2009/4/8(水)環境が天才を生んだ?

ワールドベースボールクラッシックは、 日本のV2で幕を閉じました。不況で暗い話が多い中で、 僕たちに明るい話題をもたらしてくれた。そして、勇気を貰いました。さて、決勝の韓国戦で勝負を決めるヒットを打ったのが、 不振だったイチロー選手。最後の最後に、 (本人いわく)おいしいところを持っていきました。さすがですね。日本が誇る、世界のスーパースターです。

さて、そのイチロー選手は 子ども頃からずっと、 お父さんと毎日毎日、 バッティングセンターに通っていた。何でも、1年365日の内、 360日はバッティングセンターに通っていたようです。その環境が、天才イチローを生んだのでしょうか?

2009/4/10(金)優秀な選手に共通する条件

“Outliers” P.20, P.21にある 選手の表に注目してみて下さい。これは、カナダのジュニアアイスホッケーチームの 選手一覧表です。何か、気が付きませんか?

Height(身長), Weight(体重), Birth Date(誕生日), Hometown(出身地)彼らにはどんな共通点があったのでしょうか? 答えは、、、

そう。 Birth Date(誕生日)なんです。January(1月), February(2月), March(3月)生まれが 実に多いんですね。その理由が、”Outliers” P.24に書かれています。

It’s simply that in Canada the eligibility cutoff for age-class hockey is January 1. A boy who turns ten on January 2, then, could be playing alongside someone who doesn’t turn ten until the end of the year.

カナダで、アイスホッケーのクラスは、 1月2日生まれで10歳になる生徒から分けられます。つまり1月2日を境に、 早く生まれた生徒は他の生徒より多く練習が出来ることになる。だから、1月、2月、3月生まれの選手は、 11月や12月生まれの選手より 多く練習をしている訳です。そして、レギュラーとして活躍できる可能性が高まる。

そのチャンスを発揮できれば、選抜チームに選ばれたり いい大学、そしてプロにもいける可能性も 高まるということでしょう。これはプロの選手でも、 他のトップチームでも 同じような傾向があったそうです。ここで、優秀な選手に共通する条件とは 誕生月にありました。

2009/4/13(月)成功のためのヒント

誕生月によって活躍できる可能性が高まるという傾向は、 アイスホッケーだけではなく 野球、そしてサッカーにも言える(”Outliers” P.26) と著者は言っています。

僕の好きな言葉に、Never too lateという言葉がある。 何を始めるにも、遅すぎはしないという意味です。でももし、子どもが何かに興味を持ったり、 好きなことを見つけられたなら 早い段階で、それに打ち込めるだけの環境を用意してあげる。野球でも、サッカーでも、ピアノでも、 英語でもいいと思います。

もちろん、大人のエゴや無理強いは逆効果になるので 絶対にやめたほうがいいと思いますが、 子どもの様子を見て、これだ、というものがあったら 早い頃から1年でも早く、いや1ヶ月でも早く 練習が始められるようにサポートしてあげる。これが、成功するための 一つのヒントであるかもしれません。

2009/4/20(月)ビル・ゲイツにも、ビートルズにも、モーツァルトにも共通する「法則」とは?

“Outliers”P39に ある大変興味深い調査結果が出ています。この調査では 音楽学校に通うバイオリン演奏者を 次の3つのグループに分けました。

  1. 超一流のエリート集団。
  2. 普通の人よりは上手な人たち。
  3. お世辞にもうまいとはいえない人たち。

3つのグループの追跡調査を行った結果、 驚くべき事実が分かりました。

By the age of twenty, the elite performers had each totaled ten thousand hours of practice.

1)のエリート集団の人は、例外なく20歳までに 10,000時間以上の練習をしていたというのです。10,000時間とはどれくらいかというのを 実際僕たちがしていることに換算してみましょう。たとえば、 仕事を1日8時間しているとすると、約3年間。スポーツや音楽などの練習を1日3時間しているとすると、 なんと!約9年間にもなります。

そしてこの10,000時間という「法則」は ビル・ゲイツにも、ビートルズにもモーツァルトにも 共通している法則だというのですが、 これくらいしたら仕事でも趣味のことでも それなりの結果が出そうです。納得です。では、僕の場合はどうかというと、、、

2009/4/22(水)10,000時間の法則:僕の場合

僕は、日本の大学では5年間過ごしました。1年間休学していたのです。将来何をしたいのかが決まっていなかったからので 1年休学して考えてみようと思ったのでした。その時は、やってみたいことが3つありました。1つ目は、公認会計士になること。 2つ目は、教師になること。 3つ目は、海外で働くこと。

休学中まず始めたのは 公認会計士になるための勉強でした。その前に、予備校の授業料を稼ぐため半年間バイトをしたので、 勉強時間は、 182日(半年)×12h(1日の勉強時間)=約2184時間 ということになります。10,000時間の法則には とても及んでいませんね。

しかもこの時の勉強はとても苦痛でした。挫折とも言えることですが、 これはこれでよかったのだと思います。なぜならこの約2000時間で、 自分は公認会計士には向いていないんだ ということがわかったからです。そして教師になり、将来は海外でも働いてみたいという夢に 向かわせてくれたからです。

僕が長い時間をかけた、結構がんばった と思っていたことでも2000時間。 しかもとても苦しかった2000時間。でも ビル・ゲイツもビートルズの10,000時間は 苦しくつらい時間ではなかったようですね。彼ら成功者たちの話をエピソードを読み、 僕の経験も振り返ってみると 10,000時間の法則とは単純に時間の長さだけでない、 という気がします。

2009/4/30(木)成功の方程式

僕がアメリカ大学院MBAのクラスで 経営組織論の授業を取っていた時 とても面白い、インド人の教授がいました。彼の口癖は、 “MBA取得と成功は全然関係ない” でした。MBAの教授が、 MBAの授業でMBA取ったって意味がないんだよと 真顔で言っていた。僕はおかしくていつも笑っていました。

そんな彼の授業で 僕は成功の方程式を学びました。それは、 Performance = Ability × Practice という式でした。 つまり、成功とは、才能×練習量だということ。この方程式を学んだとき、 僕は目から鱗が落ちた感じがしました。

なぜなら、あまり多くの才能を持たない僕ら普通の人でも、 練習量を増やすことで、成功することが出来る。 そうMBAの教授が教えてくれたからです。その時、僕でも成功できるかもしれない と本気で思えました。

2009/5/3(日)才能よりも大切な「何か」とは?

確かに、生まれ持った才能は、成功に大切な要素だと思います。 ただ、Outlinersでは僕らにこれは一つの要素であって 成功するために、絶対的なものではないと教えてくれます。Outliners P76では、

We have seen that extraordinary achievement is less about talent than it is about opportunity.

偉大なる成功の達成要因は、才能よりむしろOpportunity つまりよい機会やチャンスにあるといっています。そして、Outliners P80では、

A player who is six foot eight is not automatically better than someone two inches shorter. A basket ball player only has to be tall enough and the same is true of intelligence.

とあります。バケットボールプレイヤーをイメージしてみてください。 確かに、身長が高い方がプレイする上で有利なことは間違いないでしょう。でも、必ずしも180cmの人が、 190cmや200cmの人よりもうまいとは言えませんよね。スピードやセンスによって、 身長の低い人が高い人より活躍することも十分可能です。

だから、大切なことは、自分が才能がないなどと言って 決して、諦めたりしないこと。身長が低いのなら、 スピードをつける。仲間からいいパスを貰えるように、 信頼される人になる。 人間性を磨く。自分が今持っているものに目を向けて、 そして生かす練習や訓練をするこが大切でしょう。

2009/5/6(水)成功する人とそうではない人の決定的違いとは?

“Outliners” P.81には、 歴代ノーベル賞を受賞した人が卒業した 大学のリストがあります。ここには、確かにハーバードやUCバークリーといった 名門校も含まれています。しかし、すべてがすべて名門校かというと そうでもないようです。

You have to be smart enough to get into a college at least as good as Notre Dame or the University of Illinois. That’s all.(P.83)

ノーベル賞を取るためには、 少なくてもノートルダムやイリノイ大学に入学できるほどの 能力は必要であるけれどもただそれさえあれば十分であるとあります。つまり、後はその人次第だと言うことなのです。僕らは、つい自分が出来ないことにばかり目を向けたり、 失敗を他の人や状況の責任にしがちです。自分は、頭が悪いから数学が出来ない。 お金がないから、いい学校に行けない。 などなど。

そうではなくて、数学が出来ないなら、英語で勝負してみょう。 お金がないなら、奨学金を狙ってやろう。そういうOpportunity、機会に目を向けること。 成功する人とそうではない人の違いは、 そこだけではないのでしょうか?

2009/5/11(月)僕のopportunity(1)

ここまでさまざまなopportunity (よい機会、チャンス) について見てきました。そして、opportunityに目を向け、 それを利用することができる人こそ 成功する人なのではないかという考えを持ちました。では、僕の場合はどうか。僕自身には今までどんなopportunityがあったのか。改めて振り返ってみると 実はチャンスに恵まれていたというようなことが 結構あることに気がつきました。

大学を休学中にアメリカに単身旅行をしたとき、 僕はたまたまサンフランシスコ近郊の町 バークレーにある大学を訪れました。カリフォルニアの雲ひとつない青空に、 アメリカの大学特有の広大な敷地、 学生たちがそうした環境の中で ランニング、サイクリングやローラースケートなどを楽しんでいました。

また、その自由な雰囲気とは対照的に、 歴史や重厚感を感じさせる建物に 何とも言えない感動を覚えました。そのとき、「将来アメリカの大学院を卒業しよう」 そして、「アメリカで暮らそう」と思いました。

2009/5/12(火)僕のopportunity(2)

本当は卒業と同時にアメリカへ留学したいと思っていたのですが そのためのお金も、英語力もありませんでした。そこで、就職活動に入りました。僕のターゲットは、大手銀行一本でした。会社のお金でアメリカの大学院へ留学させて貰える というopportunityが得られるのは 外務省か大手の商社、或いは銀行くらいしかないと考えたからです。

外務省に入るためには国家一種に合格する必要がある。 でもそれを取得するための 試験勉強をする時間はとてもない。商社を受けるには英語力が全然足りない。銀行であれば会計の勉強はしていたのでいいのではないか、 ということで銀行を受けることにしたのです。

結果は、まあまあのところまで行ったのですが、、、 結局だめでした。そこで、本来やりたかった教師をやろうと考えました。銀行の就職活動に全敗した。だから教師になるというopportunityが得られた とも言えるかもしれません。

教師をしていた通算6年半の間に、 何千人という生徒に出会い 教えるopportunityを得ました。その何千人という生徒一人ひとりは、 それぞれが全く異なる個性を持っていました。彼らの持っているいいところを見つけ出し、 そして個性を伸ばす。 そんな経験が、たくさんできました。

だから、人種のるつぼと言われている 一人ひとりの個性が本当に強いアメリカでも なんとなく、彼らの性格が掴めるようになったのではないか と思います。こんな経験、銀行に就職していたら、 きっと出来ていないと思います。

大学時代に「アメリカで学び、働こう」 という夢を持ってから、 その夢を実現するまで8年かかりました。一見すると回り道のようですが、 僕にとってこの8年間は 海外で学び、働くための土台作りに必要な時間だったのだと 今改めて思います。

2009/5/13(水)もうひとつのopportunity(1)

アメリカで働く場合、外国人は労働ビザが必要です。一般的には大学や大学院を出てから、 H1Bビザという労働ビザを取得することになります。先日、このH1Bビザを取得した友人から興味深い話を聞きました。

2008年はビザの発行数に対して応募者数が大きく上回ったため どんなに優秀な人であっても 取得できない人が大勢いたそうです。しかし今年は不景気で外国人を雇う企業も少なく 申請する人が少なので2009年では5月現在もまだ定員になっていないそうなのです。だから、今年申請した人は ビザを取得するopportunityに恵まれていた ということができるでしょう。

 僕は、アメリカの大学院を2006年の7月に卒業しました。幸いにも卒業と同時に就職先を見つけ、ビザを申請したのですが、 友達の話を聞いて、 自分の時の状況はどうだったのだろうと思い H1Bビザの過去の年間発行枚数(制限)を調べてみました。すると、、、

  • 2001年 195,000
  • 2002年 195,000
  • 2003年 195,000
  • 2004年 132,000
  • 2005年 117,000
  • 2006年  65,000 + 20,000
  • 2007年  65,000
  • 2008年  65,000
  • 2009年  65,000

僕が申請した2006年は、 突然アメリカの移民政策が大変厳しくなった時期でした。上のリストを見ていただくとわかりますが、 2006年は前年の約半分の発行枚数です。僕は、7月に申請したので、 本来は間に合わないと弁護士さんからも言われました。ところが、ほんの僅かですがopportunityが残されていたのです。

2009/5/14(木)もうひとつのopportunity(2)

僕が大学院を卒業した年の H1Bビザの発行枚数は、 65,000枚でした。ところが、弁護士さんにいろいろと調べてもらったところ 何と 20,000枚、 大学院卒用の特別枠があることがわかりました。またそれだけでなく、 その特別枠の申請の締め切りが 2日後ということで 急いで申請すれば間に合うとの事でした。僕は、ぎりぎりのところでビザを取得することができました。

もし特別枠があることを知らなかったら 取得できなかったかもしれませんし、 申請が2日遅れていたら、絶対に取得できなかったのです。そしてさらに、 僕がビザを取得した翌年の2007年、翌々年の 2008年は 景気もよくビザ申請者が激増し、抽選が行われるほどでした。だからもし、1〜2年申請する時期が遅かったら ビザを取得できなかったかもしれません。

そう考えるとビザの取得についても 僕は、まさに最も的確なタイミングでopportunityを得た ということなるのです。

2009/5/15(金)あなたのopportunityは?

それほど英語がうまいとは言えない僕が今、 アメリカ人と一緒に働き、英語で生活しています。もし、僕が自分の英語力のことばかり考えていたら、 とてもアメリカで働くなんて 無理だと考えていたことでしょう。でもそこで無理だ、と終わらせるのではなく、

「英語ができないから、 冗談を言ったり楽しいトピックを見つけて、 コミュニケーションしよう。」
「英語ができないから、 交渉の場では数字を用いたりして、 相手が分かりやすいように準備しよう。」
「英語ができない僕と仲良く付き合ってくれる仲間や同僚に 感謝の気持ちを持って接していこう。」

と考えました。そうしていくうちに、 自分の英語力でも十分アメリカでやっていけることがわかりました。

僕には、まだ成功の定義が よくわかりません。でも、本当に周りの人たちのお陰で、 やりたいことができていると思います。それはもしかしたら、 いいことも、一見ネガティブなことも すべて自分に与えられたopportunityととらえてきたということが あったからなのかもしれません。

“Outliers”の成功者たちは opportunityをしっかりととらえ、利用していました。あなたのopportunityは何ですか? そしてそのopportunityをどう利用していますか?

2009/5/16(土)アメリカでも大人気です。

Barnes & Nobleは、アメリカで最大の書店です。 ニューヨークの5番街のような超一等地や、 サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフといった観光名所、 それから、僕が住んでいるケンタッキーの中都市まで 至るところに店舗があります。この書店の中では、ソファーがあり、 またほとんどの店舗にスターバックスコーヒーが併設されていますので ゆっくり、すわり読み?ができます。

僕も、暇なときや興味がある本があるときは、 図書館のようにそこで一日中読書を楽しんでいます。”Outliers”は、注目されている作家の一人である Malcolm Gladwellの最新刊ですので やはり、僕の近所のBarnes&Nobleでも、 正面玄関からまっすぐ行ったところの 一番目立つところに置いてありました。

今回、このブログにぜひ写真を載せたいと思い 書店の人に許可をもらって撮らせてもらったのですが、 新刊にも関わらず30%割引とありました。日本とは出版の制度が異なるため、 こういうことが行われているのですが、 アメリカでは人気のあるBestsellersこそ ディスカウントがあるのです。

2009/5/21(木)2人の天才を分けたものとは?(1)

Chapter 4では、 2人の天才が紹介されています。1人は、「独学者」のChris Langan。IQの高さが人並み外れていて、 メディアでも、アメリカで最も頭のいい人(The smartest man in U.S.) と紹介されています。もう一人は、物理学者のRobert Oppenheimer。「原爆の父」として、 大変有名な人です。2人とも子どものころから頭がよく、 天才扱いされていたのですが、 それぞれの人生は全く異なるものでした。

Chris Langanは、家庭が貧しかったので、 奨学金で学校へ通っていました。しかし、お母さんが奨学金の申請をし損ない、 結局大学へ通うことができなくなりました。この辺りから、もともと内気だった彼は さらに内向的になり、殻に閉じこもるようになります。

一方、Robert Oppenheimerは 指導教官との関係がうまくいかず、 毒殺しようとしたことがありました。しかし、彼はそこで人生を棒に振ることなく 原子力爆弾などの分野で大きな功績を残し、 ケネディ大統領から特別に表彰されるほどの成功を収めたのでした。

2人は、いわゆる「天才」でした。 その人生の中で2人とも問題を抱えることがありました。Chris Langanはそれを克服することができず 大学にも残れませんでした。それに対しRobert Oppenheimerは それを乗り越え、学者として 大きな成功を収めました。

一体、この2人の天才の人生を分けたものとは 何だったのでしょうか?

☆おまけ☆

YouTubeに Chris Langanのビデオがありました。 http://www.youtube.com/watch?v=Aq4uouoCfP4&feature=related アメリカ人の多くは表情豊かで 身振り手振りを使って話しますが、 彼は少し違うようですね。

2009/5/22(金)2人の天才を分けたものとは?(2)

Robert Oppenheimerにあって Chris Langanになかったもの。それは、’practical intelligence’だ と著者は言っています。

It is knowledge that helps you read situations correctly and get what you want. To use the technical term general intelligence and practical intelligence are orthogonal. (P.101)

practical intelligenceとは 状況をしっかりと読み取り、 目的に対して適切な行動を取る能力です。「人との関わり方についての能力」 と言ってもいいかもしれません。そして「知識を現実に応用するための能力」 とも言えるかもしれません。

IQは、先祖から受け継いだ 生まれ持った才能。それに対し、 practical intelligenceは 自分を取り巻く環境の中で学んで高めていける才能。生まれ持ったものは 変えることができないかもしれません。でも、practical intelligenceを高めて 生まれ持った能力、IQを利用していく ということは誰にでもできることと言えるでしょう。

2人の人生を分けた practical intelligence。それは生まれながらの天才だけに 与えられるものではありませんでした。自分のために自分の能力を高めることよりも 人との関わりかたの能力を高めることのほうが たくさんの可能性があるというのは おもしろいですね。

僕は、 「成功している人たちは、 勉強をたくさんして頭がよくて仕事ができる人だ」 と思っていたのですが、 このChapterを読んでますます 「必ずしもそうではない」という思いを強くしています。

2009/5/25(月)もうひとつのintelligence

practical intelligenceのところで思い出した もうひとつのintelligenceがあります。それは”Emotional Intelligence”の著者で 世界的にも有名なダニエル・ゴールマンが提唱する EQ (Emotional Intelligence Quotient) です。日本でも1990年代に その著書はベストセラーになりました。 『EQ―こころの知能指数』 EQとは、自分や他人の感情を捉え、 適切に評価し、そしてコントロールする能力のこと。practical intelligenceは、 EQにとても近い能力だと思います。

僕は、学生時代に大学院の授業の一環で、 ゴールマン博士の講演を直接聴くチャンスがありました。講演の中でゴールマン博士は 「今の社会は、学力偏重になり過ぎている。 IQと社会で成功できるかということは 実はあまり関係がない。 もっとEQ を重要視すべきだ。」 と主張していました。その話を聞いたとき、 すごく納得したのを覚えています。

practical intelligenceと emotional intelligence。これら2つのintelligenceがIQ以上に 今の社会に必要なもので、 僕らの成功を左右させるものかもしれない と思いました。

2009/6/18(木)美しい文化が引き起こした悲劇(1)

世界中には様々な文化があり、 それぞれに美しいところ、よいところがたくさんあります。ところが、その美しさが妨げになり、 大きな問題につながるケースがあることが 7章で紹介されています。

Korean Airlineは飛行機事故が多く、 More than seventeen times higher.(P.180 ) アメリカの航空会社の何と、17倍でした。この極端に事故が多かったKorean Airlineでは 徹底的な調査が行われました。その結果、事故の原因は文化と大きく関連していた ということがわかったのです。

The Korean language has no fewer than six different levels of conversational address, depending on the relationship between the addressee and the addresser.(P214)

韓国語は、話し手と聞き手の関係によって 少なくとも6種類の表現があるんだそうです。日本語の敬語も難しいですが、 それよりさらに複雑なようですね。

そして、年上の人、先輩、上司を敬う文化なので 相手との関係によって 慎重に言葉を選ぶ必要があるようです。特に目上の人に言いにくいことをいうときなどは はっきり言わず、何とか察してもらえるように 回りくどく伝えるということがよしとされます。これは「察しの文化」と言われたりもして、 日本でも尊ばれていることですね。

僕もこうした文化は、 相手に気を配り、思いやる 美しい文化のひとつでもあると思います。しかし、 こうした美しい文化が Korean Airの事故の多さとつながっていた というのですが、 それは一体どういうことなのでしょう?

2009/6/22(月)美しい文化が引き起こした悲劇(2)

目上の人を敬い、 言葉も慎重に選んでなるべく遠まわしに伝える。なぜこうした文化が 数々のKorean Airの事故の原因となったのか。

たとえば、 副操縦士は危険や問題を発見しても、 それをすぐにはっきりと 操縦士に報告することができませんでした。なぜなら 部下である副操縦士が 上司の操縦士より早く危険に気が付いた ということを知らせることは 韓国の文化の中では 目上の人に対して 不敬で失礼な行為となってしまうからです。

たしかに、相手を尊重し、直接的な表現を避ける という文化はゆったりと流れる時間の中では とても優雅で美しいものです。しかし、一刻を争う状況の中では 不便なものとなってしまいます。異常や発見したら すぐにそれに対処する必要があります。そうでなければ 大変な悲劇を引き起こしてしまいます。

脈々と受け継がれる文化を そう簡単に変えることはできません。しかし、事故を防ぐには 変化を起こさなければなりませんでした。Korean Airlineは 古くから続く韓国の美しい文化を壊すことなく 問題を解決することに成功したのです。

Korean Airlineでは 事故再発防止のための対策を講じました。それは、操縦技術のトレーニングでもなく、 安全確認のトレーニングでもありませんでした。それは、

The new language in Korean Airline was English.(P218)

Korean Airline内の共通言語を 航空業界の共通言語である英語に変える というものでした。韓国人同士が話をする場合でも、 仕事の上ではすべて英語で話す。この対策は、非常に大きな効果があり、 事故は劇的に減ったそうです。仕事上、必要な事柄を伝えるのに 比較的フラットな言語である英語を使うことで 必要なことを必要なときに的確に伝えることが できるようになったということなのです。

古くから続く文化には よいところもたくさんありますが、 状況によっては、適切でないということもあります。それまでの習慣にとらわれすぎず、 場面や状況に応じて使い分け、 的確なコミュニケーションをすることが 大切だということなんですね。

2009/7/1(水)最後に〜日本という「環境」に生まれた意味〜

僕がアメリカに来て、 早くも5年が経ちましたが 年々アメリカの日本企業の強さを実感させられます。大した英語も話せない日本人ビジネスマンが、 片言の英語で身振り手振りを使いながら、 必死で、アメリカ人とビジネスをしています。

なぜ、日本人そして日本企業が アメリカで成功できるのか? それは、 日本にある「環境」と「伝統」に理由があるのではないか、 と感じます。たとえば日本は世界的に見ても、 時間を守ることをかなり大切にする文化を持っています。

日本人以外の人は、 その人によっては約束の時間から数時間遅れることは まったく問題ないことのように振る舞うことがあります。時間を守ることがそれほど大切ではない、 と思われている文化の中で育っているのですから それは仕方がないことなのかもしれません。でも、これではなかなか仕事は進みませんよね。

ところが日本では数時間どころか、 数分でも時間に遅れることは 相手に失礼だ、とふつう考えられます。約束の時間を守ることは かなり当たり前のことなのです。これはビジネスをする上で とても重宝がられる文化です。

その他にも勤勉に働くとか、丁寧に仕事をするとか、相手に気を配るとか、 日本で当たり前に思われていることは 他の国の人にとっては当たり前のことではなく、 なかなかできないことだったりします。

そして相手のことに気を配りながら発揮される柔らかなリーダーシップは 日本で育った人の多くが共通して持っているもので、 こういうスタイルのリーダーシップはこれからの時代に必要だ、 とアメリカではよく言われています。

僕は日本にいたころは 日本の素晴らしさがわかりませんでした。「なんで日本ってこうなんだろう?」 と不満に思い、悪い面ばかりを見ていたような気がします。しかし、アメリカで学び、働いてみて 日本の良いところがよくわかるようになりました。

この3ヶ月、成功環境学を学び、 私たちが今この時代に日本という国に生まれ育ったことは すごいラッキーなことなのかもしれない。そう改めて思うようになりました。日本という国の環境の中で育ち、 日本という国の伝統を引き継いでいることは 今の時期、世界的に見てすごく幸運なことかもしれない。そう強く感じるようになりました。

あなたもぜひこう自問してみてください。「今、この時代に日本という国に生まれたことは 自分にとってどんな意味があるのだろう?」この質問を自分にしてみることで 自分のまわりの環境が自分にとっての「制限」ではなく、 自分の成功を「後押しするもの」であることに きっと気がつくきっかけになるのでは、と思います。

そしてもしかすると あなたの目からは暗く見えているかもしれない 今の日本の現状や未来が、 急に明るいものに見えてくるかもしれません。これからこの環境の中で何ができるだろう? この時代でしかできないことって何があるだろう?そんなことを考え、わくわくしながら これからも一緒に学んでいきましょう。

そして「成功環境学」を学んだことで得た新しい視点を持って 一緒に新しい時代をつくっていきましょう!

猪俣潤

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