塾経営の裏側:私が自分で塾を経営しはじめたワケ

僕は大学を卒業してから10ヶ月ほど、大手の進学塾に勤めていた。
その塾は新卒で就職する社員が100人もいるような大きな塾で、当時、就職情報誌に積極的に広告を出していた。

そこで謳われている教育理念に共感し、その会社に就職した。

僕はまだ当時教育の仕事を人生通してしたい、とは考えていなかったが、アメリカの大学で学んできたスピーチコミュニケーションが実践で活かせる、ということと、実力主義の社風に惹かれたこともあってその塾で数年は頑張ってみたい、と思ったのだ。

しかし、入社してみて「塾」というものの経営の仕組みを知り、非常に失望してしまった。

僕が就職したのは地元のトップのシェアを誇る集団指導の塾だ。どこの地方都市にも必ずあるような「◯◯高校 合格者231名!」みたいなことを折り込み広告でドンと書いてある感じのところである。

基本的にこういう地元トップシェアの集団指導の塾は、地元のトップ高の合格者をたくさん出すことが集客上の重要ポイントであり、圧倒的なトップ高への合格者の数を見て、次の年も生徒がたくさん集まる、というビジネススタイルになっている。

地元のトップ高の合格者をたくさん出すために塾は何をするか。

トップ高に入りそうな「高い成績をすでにおさめている」生徒をたくさん集めようとするのである。

成績の低い生徒を集めて、彼らの成績を上げようとは、あまりしない。
なぜならそれは非常に手間がかかり効率が悪いからである。

だから、成績優秀者には授業料を割引するような制度を作ったりする。

成績が一定以下の生徒は面倒がかかるので入塾試験をやり、入塾をお断りする。

入塾試験をして面倒な生徒を断ることで、ブランド感が上がり、成績上位の生徒がさらに入ってくる。

成績上位の生徒だけを同じクラスにつめこんで、競争させ、勉強させる。

成績上位の生徒は成績上位の友達を持っていることが多いので、露骨に「頭のいいやつ連れて来い」と生徒に言う上司も多かった。

こういうビジネスモデルを目の当たりにして、なるほど、と感心する部分もあったけれど、内部ではほとんど「教育」と言えるようなものは行なわれていない、ということには本当にがっかりもした。
最初の3ヶ月くらいは「もしかして自分の思い違いかもしれない」と思って、何度も違う角度から会社を観察してみたり、いろいろな考察を繰り返してみたけれど、どうやら少なくとも僕が期待していたような「教育」はそこでは行なわれていないようだったし、他の塾でも行なわれていないように見えた。

自分がこの会社に期待していた「理想の教育」のイメージが自分の中にあるのなら、そしてそれが他にどこでも行なわれていないなら、自分で塾をはじめればいいじゃん。

そう思って、その会社を辞めた。

その塾も、他のほとんどの塾も、「勉強は本来つまらないものだ」「勉強は修行だ」というような考え方のもとに作られているように見えた。

だけど僕は「勉強は本来楽しいものだ」と考えていた。
だって「新しいことを知ること」は誰にとっても楽しいことだから。
「できなことができるようになること」は誰しも嬉しいことだから。

つまらないことはなかなか集中できないし、継続もしにくいから、成果も上がらない。でも楽しいことだったら集中できるし、継続もできるから、成果が上がりやすい。

じゃあ「学ぶことは楽しい」ということを前提にして、それを形にした塾を作れば、ぜったいうまく行くし、みんなの役に立つ、と思った。
そして退職から3ヶ月後、自分の塾を開校した。

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