何歳になっても次々と新しい能力を身につける方法

人は何歳になっても新しい能力を身につけることができる、と思う。ただ多くの人は「新しい能力を身につける方法」というのを知らないだけなのだ。今回は「どうすれば何歳になっても新しい能力を次々と身に付けていくことができるのか?」ということに関するお話しを少ししてみたい。

書き込み洋書

 

次々に学ぶ従兄弟

今日、床屋に行った。私の親戚一家がやっている床屋で、いつも1歳年下の従兄弟から散髪してもらっている。この従兄弟の彼と、今日はこの「新しい能力を身につける方法」についての話になった。

彼は今、毎年のように新しい能力を身につけている。最近は主に芸術の分野に興味が行っているようで去年から今年にかけては粘土を一生懸命いじっていて、これから来年にかけては写真を勉強する、という。

その他にも、絵画、パソコン、小説執筆、熱帯魚の飼育、ギター、ドラム、漫画執筆、フィギア製作などなど、できることは山ほどある。しかも、どれも腕はプロ級。「現代のレオナルド・ダ・ビンチ」と呼んでもいいほどの多芸さだ。

でも、彼は別に小さかったときから何でもできたわけではない。成績もパッとする方ではなかったし、体も弱く、運動も苦手だった。ところが成人してから「新しい能力を身につける方法」のコツがわかってきて、それから様々なことができるようになってきたそうだ。特にここ5年は能力を身につけるスピードがどんどんアップしてきているという。

できないことを見つける楽しさ

「そのコツって何?」と聞いてみたら、非常に興味深い答えが返ってきた。そのいくつかを紹介してみようと思う。

まず「どんどん新しいモノを身につけているけど、そのコツってなんだと思う?」とその従兄弟に聞いてみたのだが、返ってきた答えがかなり興味深い。

あの、5年くらい前に『できないことを見つけるのが面白い』という感覚になってきたんですよ。それまでは、新しいことを始めて、できないことがあると嫌になっていたんですよね。それが今は、できないことに出会うと嬉しくなるんです。

だって『できないこと』がハッキリすれば、何に取り組んだらいいか見えてくるじゃないですか。やるべきことが見えてくると、意欲がわきますよね。そして意欲を持って取り組み続けると、いつかそれができるようになる。それがわかっているから楽しいんです。

学校教育では「わからないこと」「できないこと」が明確になったとき、×(バツ)をもらう。もしくは減点されたり、怒られたり、恥ずかしい思いをさせられたりする。これを義務教育の間、最低9年間、高校も大学も行ったならば、合わせて16年間も毎日毎日繰り返し体験させられる。

その結果「わからないこと・できないことはイケナイこと」という考えが骨の髄まで染み込む。だから普通は、「わからないこと」「できないこと」に出会うと嫌な気持ちになり、そこから逃げ出したい、と思うようになる。本当は「わからないこと」「できないこと」こそが、面白いことであり、そこに成長や喜びのタネが詰まっているのに。

できない理由がわからないとき

「できないことに出会うと嬉しくなる」という在り方を獲得したことで、従兄弟の学習は加速した。「でも、できないことに出会っても、できない理由がわからないときってないの?」何気なく、そう聞いてみた。するとさらに興味深いことが聞けた。

できないことに出会っても、『なぜできないのか』という理由がわからない時もありますよ。そういうときはやっぱりイライラしましたが、でも、今はイライラしなくなりました。そういう時は『何回か同じ失敗をわざと繰り返せばいい』ということがわかったからなんです。

何回か同じ失敗をわざとやってみると、最初はわからなかった『なぜできないのか』という理由が浮かび上がってくるんですよ。失敗したときに起こる共通のパターンがありますからね。それを観察していくと、原因がわかってくる。

普通は同じ失敗を意図的に繰り返す、なんてことはできない。失敗することは嫌なことだから。でも、『失敗』や『できないこと』が喜びのモトである、という考え方に変わると、それができるようになる。そして、成長も加速する。これは、なかなか素晴らしい方法だ。

できない理由がわからないときは、『何回か同じ失敗をわざとに繰り返せばいい』。自分を客観的に見て、興味深くその失敗を観察する。そうすると「できない理由」が見えてくる。なるほど。これはさっそく自分でも使ってみよう。

“Keep Starting” の原則

「他に、新しい能力をどんどん身につけられるようになったきっかけはないの?」と尋ねてみた。

ある時から『ひとつのことを続けられるようになった』ということは大きいですね。前は同じことを数日間とか数週間とか、もしくは数ヶ月とかかけて取り組む、ということが出来なかったんです。

僕の場合、小説を書くのが好きで、よく書いていたんですが、1日で書き上げられる長さのものしか書けなかったんです。長編小説を書きたい、っていう気持ちはあったんですけど、ひとつのストーリーを続けて書く、っていうことが出来なかったんです。

それで、とりあえず何かを続けてみよう、と思いました。そうすればそういう習慣とかクセとか根気がつくと思って。で、ぼくの場合は、日記をつけてみることにしたんです。

日記を毎日書くのって結構大変です。書きたい日もあるけど、なんとなく気分がのらないときもある。そこで、気持ちがのらない日は無理して書かなくていい、というルールにしたんです。

でも、ただ書かないだけではなくって、書きたくない日は『今日は書きたくない』という一文だけは書くようにしたんです。そうすると不思議なもので、『今日は書きたくない』と書いたんだから、どうして書きたくないか、とか、もう数行書こうかな、という気持ちになったんです。

もちろん、『今日は書きたくない』の一行で終わる日もたまにはあったんですが、ほとんどの日は数行以上書いてましたね。その結果、続けられるようになりました。

The Now Habitこれも非常に興味深い。ソフィー・ジ・アカデミーで扱っている”The Now Habit: A Strategic Program for Overcoming Procrastination and Enjoying Guilt-Free Play“という「自分の生産性を上げる方法」についての名著がある。

この中で著者が繰り返し言っている生産性向上の原則のひとつに “Keep Starting” というものがある。この “Keep Starting” の原則と、床屋の従兄弟は全く同じことをやっている。この本を読んだことがないのに、その方法を自分で編み出すとは、さすがだ。

“Keep Starting” とは直訳すれば「始め続ける」ということ。ふつう、仕事や勉強をするとき、「終わること」を意識する。だけど、「終わること」を意識しすぎると荷が重く感じたりして、なかなか始められなくなってしまうことがある。だから、逆に「始めること」を意識してみる。終わらなくてもいいから、とりあえず始めてみるのだ。

たとえば数学の宿題がいっぱい出たとする。でも、やる気が出ない。こういうときは、とりあえず1問だけやってみる。もしくは宿題の範囲を確認してみるだけでもいい。すると、急にやる気がのってきたりすることもある。そういう時はそのまま続けてしまえばいい。

もちろん、やっぱり気がのらないこともある。それはそれでOK。とりあえずStartしただけで十分。次にはじめる時に、まったく何も手をつけていない場合に比べて、グッと手をつけやすい気がするはずだ。これはシンプルだけど、勉強や仕事、家事など、さまざまなところに応用できる実用的でパワフルな方法。

まとめ

ポイントは次の2つに要約されるだろう。

  1.  「できないことを見つける」ことを楽しむ
  2. 完成を目指さずに毎日少しずつでも「始め続ける」

結局この2つのことが積極的にできれば、何歳になっても新しいことをどんどん身に付けていき、その新しく身に付けた能力を人のためや世間のために応用し続けてまわりを継続的にハッピーにしていくことって可能なのだと思う。

ぜひ試してみてください。

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